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2020年 06月 06日
スウェーデンはノーガード戦法ではない  国民の納得する対策
スウェーデンはノーガード戦法ではない  国民の納得する対策_d0164519_07494009.jpgスウェーデンの対策が日本のマスミディアでは、あたかもノーガード戦法のように報じられることがあるようです。レストランで食事と会話を楽しむ光景が掲載され、感染を進行させて国民の6割が抗体を持つことで流行を収束させる「集団免疫作戦」をとる特異な方針として紹介されます。その結果、周辺諸国にくらべてひじょうに多い死亡者が生じて、国民の一部は恐怖のどん底で民意が分裂しているかのような書き込みがネットでも見られます。その一方で、首都のストックホルムでは抗体獲得率が進み、5月中に集団免疫の状態に達するのではないかとも言われていましたが、政府はもう少し遅れることを認めています。西欧の流行が山を越えてロックダウンが解除されていく現在、今後起きるかもしれない第2波の流行に備える意味でも、スウェーデンの実情がどうなのかを考えてみたいと思います。

周囲の国々といえばノルウェー、フィンランド、デンマーク。スウェーデンの人口が1,000万人を越えるのに対して、他の三国はほぼ半分の500万人です。首都圏への人口集中は多くの国で総人口の約2割ですが、コペンハーゲンは対岸のスウェーデン国内を含めた大きな都市圏を構成しています。石油資源、農林業などの一次産業と、従来からの電気、自動車、兵器などの工業と、スウェーデンではサービス業が増えていますが、この4カ国間でCOVID-19の流行を比較することが無理というほどの違いはなさそうです。ただし、人口規模が他の三国にくらべてスウェーデンが2倍ですので、人口当たりの感染者数や死亡者数で比較しなければなりません。

目にする多くの統計が、国別の感染者や死者の合計ですが、私が毎日見ている「国別の人口あたりの感染者数と死者数」のグラフがあります。それで見ると確かに周辺3国に比べると、スウェーデンの感染者も死者も多い。低い順にフィンランド、ノルウェー、デンマークでスウェーデンはフィンランドの約3倍、デンマークの1.8倍。世界のトップクラスですが、アメリカ、ベルギー、スペイン、イギリス、イタリアなど、スウェーデンより多い国もあります。都市のロックダウンをしなかったからといって、飛び抜けて感染が拡大しているとは言えないでしょう。人口当たりの死者数も同じような状況ですが、下降気味の横ばいで明確な減少とも言えず微妙なところです。スウェーデン政府はロックダウンを行う権限を議会から与えられていて、医療崩壊が起きるようであればいつでもロックダウンをできることになっています。毎日の記者会見で医療の余裕が公表されていて、国民は政府の方針に納得しているようです。日本のマスミディアの取材は最初から物語や絵を設定して、それに合う事象を取り上げますので、できれば現地でどう報道されているのかに当たらなければなりません。スウェーデンに移住したエンジニアが現地の暮らしを以前からYouTubeにアップしていて、この2ヶ月ほどは丁寧に政府の対策や感染の状況、日常の暮らしをリポートしています。代表的な動画を一つ紹介しますが、時間のある方は「スウェーデン移住チャンネル」から前後の動画をご覧ください。直近の世論調査では、政府とその対策に対する国民の支持は増えていて、移民難民を差別する極右政党は逆に支持を減らしています。国政選挙の投票率は85%と高く、政府はいくつかの政党の連立で、協力政党もあり、政府が民意を反映しているという点でも他の西欧諸国やアメリカ、日本とはかなり違います。延命治療が少なく、国民の死生観の違いもあるようです。ただし、直近の動画では、政府の支持率が下がり、方針も修正される可能性があり、今後も注目が必要です。

政府は「集団免疫作戦」をとるとは言っていないようです。経済にも人権にも配慮しながら、感染拡大を遅らせてカーブをなだらかににして、医療崩壊を避けるとしています。これまでの死者の多くが高齢者施設に集中していて、現在はその対策が強化されています。感染者と死者の増加カーブも、他の西欧諸国同様、なだらかな台地状のカーブになり、拡大は収まってきています。5月初めまでの抗体獲得率は5〜6%らしく、スペインでも5%と、当初考えられていたより低く、6月初めでは20%ぐらいだろうと推定されています。東京でもさらに低く、武漢でも現在見つかる無症状感染者が少ないことから見ても、このウィルスの感染力は意外に低いのかもしれません。非感染者をロックダウンや自粛で閉じ込めるよりは、ハイリスクの人々や医療従事者、流通、インフラや生活必需品産業従事者を対象とする対策が望ましいのではないでしょうか。最近の統計を見ていると、当初は否定された季節性、冬に流行し夏に減るということも否定できない気がします。日本人の民度が高いとか、真面目で清潔好きの生活習慣とか、まったく根拠もなく諸外国のデータとも一致しない嘘に安住せず、合理的な対策を立てておく必要があります。






by maystorm-j | 2020-06-06 07:50


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