2020年 05月 24日
COVID-19のパンデミックが起きて、集団免疫ができると感染はそれ以上広がらないという話をはじめて聞いた人も多いと思います。一つの社会の中で、6割程度の人が感染して抗体を獲得すると、流行は収まるという理論です。これまで、インフルエンザではそのような現象が見られたのかもしれません。残り4割の未感染者がいても、流行が収まるという数量モデルによる解説もできるようですが、モデルが成り立つにはいろいろな条件や仮定が必要なのではないでしょうか。その点について、医学者でも疫学者でもない私には説明できませんが、過去の歴史を俯瞰することで感じる疑問が多くあります。 たとえば、ワクチンのない感染症で人口の6割が免疫を獲得するには、それだけの人が感染しなければなりません。SARSのように、今回のウィルスにごく近縁のウィルス感染症では、集団免疫の形成とは関係なく収束してしまいました。致死率が極めて高い感染症では、集団免疫の獲得という戦略は無謀すぎることもあるでしょう。毎年インフルエンザは発生し、ワクチンを受けた人も一部は感染します。一方ではワクチンを受けず、近年インフルにかかったことがない人でも、インフルの流行年にもかかわらず感染しない人もいます。流行年でも感染割合は人口の1〜2割程度、6割が感染して免疫を獲得する状態に至る前に流行は収束します。 私はこれまでインフルエンザにかかった記憶がありません。1日で治る鼻風邪は毎年一度程度かかりますが、熱が出るような風邪はほぼ5年に1度。インフルにかからないので、ワクチンを接種した記憶もありません。もしかすると、半世紀以上前の中学高校時代に学校で受けたかもしれませんが、中高6年間皆勤でしたのでインフルを発症したことがないのは確かです。周囲の人がインフルの予防接種を受けたと話しているたびに、「インフルエンザにかかったことがありますか?」と聞く習慣があって、2〜3割の人が「かかったことがない」と答えます。年によって異なる型のインフルが流行るので、ワクチンの有効性は限られていますし、軽症で済むけれど完全に防御できるとも限りません。やはり、感染しない体質の人、感染しても症状の出ない体質の人がかなりの割合でいると思われます。 さらに、私の家系にはリュウマチや膠原病、ほとんどのメンバーが花粉症や食物アレルギーなど、免疫システムに絡んだ病気があります。花粉症は祖父の代から確かで、私も7歳から毎年苦しめられました。歳とってからのこの5年ほど、花粉症が軽くなり、体が枯れてきたのかと逆に心配です。中学生の頃から、免疫が強いタイプだと自覚していましたが、ウィルスならなんでもやっつけてしまうというわけではなく、4〜5年前の正月、ノロウィルスにやられて10日間、閉門蟄居で過ごしたことがあります。その時も、最初の二日ぐらいはゴロゴロしていましたが、その後は読書、後半はいつも通りの引きこもり仕事。今回、多くの人々がStay Homeで仕事をしたり、本を読んだりYouTubeを見たりして過ごしたのを、ちょっと先に経験したようなものです。 集団免疫とかこれから本格的に進む抗体検査は、病原体(異物)が侵入したことで作られる獲得免疫ですが、生物の体内にはもともと存在する自然免疫があります。免疫力は強い人や弱い人がいるようですが、どんな異物に対しても働くわけではなく、花粉症になる人もいればならない人もいます。食物アレルギーでは、反応する食品は人によって細かく分かれます。花粉や食物では、大量に摂取した後で抗体ができてアレルギーが起きることが、私の場合でもいくつかあります。免疫の力も一定ではなく、体調の変化で免疫力も変わるようです。日が短くなって気温が下がる秋から冬にかけては、免疫力も下がるのではないでしょうか。医学では逆に、夏は免疫力が低下すると言われているようですが、私の実感はでは活動しやすく、野菜が豊富な季節の方が体調は良くなります。いくつかの持病があり、10年間にわたって2ヶ月に一度クリニックで検査を受けてきましたが、冬になると検査値が悪くなると言う傾向が見られます。 インフルエンザが冬に集中するのはウィルスの性質と言われ、今回のSARS-CoV-2ウィルスは気温の高い地域でも流行していることから、当初は暖かくなっても収束しないのではないかということが専門家の間で言われていました。しかし、実際は3月の終わり頃から落ち着き、4月に入ると新しい感染者数が減少する地域が増えました。日本も非常事態が宣言される前から減少し始めます。感染から、発症や検査で陽性が判明するまでのタイムラグを考えると、日本ではこれがさらに明確です。どんな対策が有効だったのかは、今後検証が進むでしょう。集団免疫策をとったスェーデンでも、6割の免疫獲得にはまだ遠いのですが、他の西欧諸国同様に、新しい感染者の増加は収まる傾向が見られます。今のところあまり自然免疫についてはあまり論じられていません。人によってバラツキのある自然免疫力ですが、他の生理現象の多くがそうであるように、季節的には日が長くなり気温が上がる春に活性化するのではないかと、直感的ですが思います。気温の上昇とともに食中毒や昔からある感染症が増えるのに対抗しなければなりません。免疫力をメカニカルに解釈する医学の常識とは反するかもしれませんが、比較的自然な季節変化の中で生きてきた1匹の動物としての実感です。ある現象のメカニズムが解明されると、それ以外の部分はその現象とみなされず、現象が意味するものは狭めれられるようです。「自然免疫力」と言わずに、「自然治癒力」と言うべきかもしれません。 中国からの報告で、野外で感染した割合はひじょうに低く、ほとんだが屋内での感染と言われています。日本でも、クラスターとか施設内感染とか、問題になったのは屋内です。屋外では、人の密度も接触回数も少ないでしょうし、ウィルスに対する太陽光の働きも考えられます。はたして、Stay Homeが良かったのか、もしかすると、外に出て体を動かし、自然免疫力を活発にした方が良かったのではないかとも思います。少なくとも、人の少ない公園や山歩きを禁ずるのはいきすぎでしょう。一時的なものかどうかわかりませんが、収束に向かっている現在、どうして減少したのか、何が有効だったのか、何は逆効果だったのかを検証して、今後の再度流行する可能性に備えておくことが必要になります。
by maystorm-j
| 2020-05-24 08:19
| 社会
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