2020年 05月 03日
COVID-19が武漢を中心に拡大していたころ、ヨーロッパ諸国は楽観的な見通しを語っていましたが、イラン、イタリア、スペインと流行が進み死者が増えるに連れて、西ヨーロッパの首脳や研究者を中心に「パンデミックとの戦いは戦争である」という言辞が聞かれるようになりました。あたかもこれこそが「第三次世界大戦」だという論調です。「総力戦」「国民一丸となって」「制圧するまでは我慢」・・・基本的人権や私権の制限が当たり前のように声高に語られています。本当に今回のパンデミックは世界大戦なのでしょうか。 1918パンデミック(通称スペインかぜ)では、諸説ありますが、5000万人死亡した言われています。同じ時期にあった第一次世界大戦の死者は民間人を含めて1,600万人ですので、確かに世界大戦より多くの死亡者を出しています。このクラスのパンデミックは歴史上何回もありますが、1918パンデミックを最後に、その後は1957アジアかぜの100万人が最大で、1968香港かぜの75万人。SARSやMARSなど致死率の高さで恐れられましたが、死者の数はとても少なく、通常の季節性インフルで毎シーズン50〜100万人死亡しますので、恐怖心と実態がかけ離れてしまっているように思います。 戦争では「敵を殺す」「敵国を破壊する」ことが奨励され、自国あるいは自国の支配者の存亡、自国民が生き残るためには敵味方双方の人権が無視され、軍事力維持のために私権が制限されて通常の生活ができなくなります。病気との戦いを同じように語って良いのでしょうか。むしろ、通常の生活を維持するため、人権を保護するために病気と戦うのではないでしょうか。人を殺す戦いと人を守る戦いは全く別物です。無差別虐殺、空襲、原爆の悲惨さと病気で死ぬことを同一視する鈍感さ。死亡する人を極力減らすのが病気との戦いの目的ですが、そこには敵も味方もありません。病気との戦いに負けるのを避けたいとは言え、勝ち残るためにそのリスクを他者に転嫁し極端な私権の制限を課すことには倫理的なためらいがあります。その結果、病気以外で死亡する人が増えます。病気で死亡する可能性の低い人々の暮らしをどこまで破壊して良いのか、悔しい現実ですが政治はリスクの大きさを比較しながら、冷徹な判断をしなければならない。そしてその判断で起きる結果に責任を持たなければなりません。 専門家がその専門領域を越えて、私権の制限を大きな声で語ることは許されることではないと考えます。それは手続きを踏んで確立された政治の役割です。「総力戦」のラッパを吹きながら、現実には格差がさらに拡大し、被害が弱者に転嫁される対策を進めてはならず、まして「自粛」の「強要」で生じる被害の保障をせず、結果に責任を取らない日本の政治のありようだけは過去の戦争と相似するものです。 西ヨーロッパで一斉に強権的な対策が展開される中で、スェーデンのみが緩い規制で日常生活を維持しながら集団免疫の獲得を目指す対応を今も展開しています。スェーデンの人口は約1,000万人。5月3日、公式の感染者数は22,082人、死者数は2,669人で致死率12%。周辺諸国の2〜3倍の致死率で、国内の専門家からも批判が出ています。何もしなければにほんで42万人が死亡すると述べた「8割おじさん」こと西浦氏のモデルでは、スェーデンですでに4万人の死者が出ているはずではありませんか?社会的距離を保つなどの緩い対策は行われいますので、2万人ぐらいでしょうか。何れにしても現実はモデルを裏切っています。 どのような調査の結果かわかりませんが、スェーデン政府はすでに抗体を持つ人が人口の4分の1ほどに達していると述べています。仮に全人口の25%である250万人が感染しているとするなら、本当の致死率は0.1%になります。最近、世界各地で実際の感染率を調べる試みが進んでいます。そこで報告される数字は1〜30%の間でまちまちですが、例えばスタンフォード大学がシリコンバレーで行なった調査では2.5〜4.2%がすでに感染していて、公式発表の50〜80倍。致死率はその結果0.2%に下がるとしています。多くの調査の正確さについて私には判断できませんので、最新の報告をご自身で見て判断していただくしかありません。スェーデンの死者数はすでにインフルを越えているかもしれませんが、大きな犠牲を伴う強権的な対策を無前提的には正当化できないことを示していると思います。もちろん、殺さなければ殺されるという「戦争」ではないことを確信しています。
by maystorm-j
| 2020-05-03 08:06
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