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2020年 04月 30日
COVID-19 感染者・死亡者の実態  超過死亡
COVID-19 感染者・死亡者の実態  超過死亡_d0164519_05171553.jpg疫病や環境汚染が起きた時、その初期段階ではなかなか実情が把握できず、対策は大きく取ることが必要でしょう。しかし、調査が進み全体像が判明するに連れて、地域によって必要とされる対策の質と量を絞り込んでいくことになります。過小な対策では被害を抑えられませんし、逆に過大な対策をすれば、その対策によって生じる被害が大きくなります。疫病の場合は、その流行の地域ごとの進展具合によっても対策の仕方が変わっていくでしょう。それまでに行われた対策と感染数や死亡数との相関から、病原体の毒性を算定することも必要です。流行速度の速いCOVID-19では、日々更新される最新の実情を知ることが、対策策定の前提です。

最新の実情を知るために、毎日の感染者数と死亡者数の推移を見ています。見やすい国内統計としては、東洋経済社のサイト「新型コロナウィルス 国内感染状況」 を利用しています。新規感染者数の推移を見ると、今月(4月)の15日ごろから頂点に達して、その後ゆっくり下がっています。新規死亡者数は4月26日を頂点に下がり始めています。検査数は今月中旬以降横這い状態です。多くの専門家やWHO、諸外国から指摘されているとおり、日本では検査が限定されています。検査数を増やせば感染者数も増えるでしょう。4月29日現在の累計感染者数は13,695人とされていますので、ざっと国民1万人に1人強。約0.01%の感染率となります。実際の国内感染者数がどれぐらいなのか、感染の可能性が強い人に偏らないランダムな検査をした場合、どれぐらいの感染者が発見されるのでしょうか。

発症の有無にかかわらず、すでにウィルスSARS-CoV-2に感染した人の割合を調べた報告が、諸外国からいくつか出ています。国内でも一定の集団で行われた検査がいくつか報告されています。その値はまちまちで1%ということもあれば、30%ということもあります。検査方法の改良にともなって、今後信頼できる数字の報告が増えていくでしょう。現在はあくまでも推測でしょうが、多くの専門家が日本の検査体制で発見される感染者の、実際は10倍〜100倍の感染者がいるのではないかと述べています。

その一方で、実際の死亡者数はどれぐらいいるのでしょうか。原因不明の死亡者の中に、死後検査したら感染が見つかったという報告がありました。通常のインフルで死亡した場合でも、インフルによる死亡とされずにその他の持病の悪化などでの死亡とされることが多く、インフルの影響で死亡した人の総数を見るために「超過死亡」という概念があります。端折った言い方になりますが、一定の期間内に普段なら死ぬだろうと思われる数と、実際に死んだ数の差が、その感染症で余分に死んだ人の数と見るのです。その超過死亡数の報告がヨーロッパでは、多い国で公式に発表されているCOVID-19の死亡者数と同等程度、多くは20%とか50%とかで、スェーデンのようにマイナスの例もあります。

国立感染症研究所の4月27日報告「2019/20シーズン21大都市インフルエンザ・肺炎死亡報告書」
これを見ると、今シーズンはスタート時点で高めだったインフルがその後も横ばいで、今年の2月ごろから減少、4月中旬には流行が収束しているように見えます。それでもその間、毎週400人前後の死亡者数ですので、COVID-19よりは1桁多いことがわかります。新しい感染症にはまだベースラインがありませんので、厳密な意味での超過死亡数を算定できないかもしれません。直感的にですが、実際の死亡者数が公式に発表されている数より桁違いに多いとは思われません。公式発表の死亡者数が減少傾向にある現在、それとは逆に実際の死亡者数がどんどん増えているとも想像できません。実数を示してはいないとしても、傾向は表していると思われます。

感染者・死亡者数の低い地方と、高い都会に同じ対策を被せるのには無理があります。超過死亡が多いところと少ないところの差がなぜ起きるのか。都市封鎖を行わずに流行を制御できている韓国やスェーデンなどのやり方を学ぶ必要もありそうです。専門家会議が「医療こそが人の命を守る」と自負するのはいいのですが、その医療を支えているのは社会であり経済であり、生産と流通であることを忘れてはいけないでしょう。医療を支える後方の基盤を破壊しては長期的対策は成り立ちません。






by maystorm-j | 2020-04-30 08:36 | 社会


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