2016年 10月 16日
昨朝は0.5度まで下がり、中秋と言うより初冬の寒さで、町内でも霜。今年は春以来、変動の大きい気候が続いてきました。先日、町のトレーニング施設で2世代下の歯科技工士と仕事の話になりました。最近は義歯を作る際、柔らかくて硬い?樹脂で歯茎をぎゅーぎゅーと包む型取りをしないそうです。口内の立体映像を撮って(CTのような?)、3Dプリンターのような機器で型を作ったりや、自動的に切削する機械で義歯を作るそうです。そのためのCADとよばれるコンピューターソフトだけでも、300万円もするという話です。CADと言えば、以前から建築設計で使うソフトとしては知っていました。4〜50万円するソフトで、それでも高いと感じていました。設計士だけではなく在来工法の木造建築施工業者(大きな大工さん)にとっても必須のようです。35年前に家を建てた時、設計図をにらみながら柱や梁の材木に墨つけし、鋸とノミでほぞ・ほぞ穴をあけ、軸組の時は寸法が合っているかハラハラドキドキでした。今は建築屋さんの作業場で、自動的に機械がプレカット(切り彫り)するようです。 ムシ歯が原因ではないのに、義歯が5本ある私は、時代によって製法が替わるのを見てきました。30年以上前の差し歯は一度もトラブルがないまま、今も現役。20年前に作った部分入れ歯は金合金のワイヤで両側の歯に引っ掛けるタイプで、1mm程の細い金属ですが、特殊な焼きを入れてあるのか、バネの力が緩む事なく、最後は樹脂製の歯の部分がすり減って使えなくなりました。作り替えるときに、そのワイヤを扱える技工士はもういないといわれ、今のものは銀色の鋳造品です、横の歯にはぴったり合いますが、締め付けるバネ力はなく、良くはずれるので、折れないかヒヤヒヤしながらペンチで内側に少し曲げたりしています。残念ながら古い時代のものほど、機能的にすぐれ、長持ちもするようです。自分が鍛金の仕事をしているせいかもしれませんが、金属加工の方法としては鋳金や彫金より、鍛造技法がさまざまな金属の特性を活かす加工方法だと思っています。延性や展性などは中学で習います。復元力、熱処理(焼きしめ、焼き鈍し)、加工硬化(鎚ちしめ)などなど、金属の性質変化を利用して加工しますが、鋳造や彫造では均質で変化の少ない物質として金属素材を扱います。 鍛造技法は機械化・量産化しにくく、すでに滅びかけている技術です。熔融・凝固を利用する鋳造は、素材の無駄が少なく、同じものを量産も出来ますが、逆に一つ一つ異なる形状を作るには、一つ一つ型を作らなければなりません。義歯では、型を3Dプリンターで作るのでしょう。映像データから切削する工法は一つ一つ異なる形状に直接対応できますが、機械投資がかなり高そうです。 機械化、自動化は人件費と作業時間を短縮します。製品の精度も高いのでしょうが、逆に素材が不均質で変化するものでは精度が下がりそうです。制作時点では客の状態や希望に忠実な対応が出来そうですが、客の経年変化や環境変化に柔軟に対応するのは難しそうです。CAD/CAMという技術システムはまだ発展途上でしょうから、今すぐに評価を定めることは出来ませんが、すでに長い年月が経つ大量生産品を例に、メリット・デメリットを比較するのも良いでしょう。例えば、量産システムの先駆けである「T型フォード」、70年間基本構造を変えず各国で類似品が生産され続けている「MK-47」(カラシニコフ銃)などの典型例で考えると解ることがありそうです。
by maystorm-j
| 2016-10-16 07:21
| 社会
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