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2016年 07月 23日
アベノミクスに人はなぜ騙されるのか/経済の土俵で闘う事が必要 その1
参院選挙が終って、しっかりとした反省がなされないままに、今は東京都知事選挙に関心が移っています。政権交代後、何度も選挙で敗北を経験しながら、敗北の原因をしっかりと検証する事なく、アベノミクスに人はなぜ騙されるのか/経済の土俵で闘う事が必要 その1_d0164519_07310870.jpgいよいよ改憲の鳴動が聞こえるようになってしまいました。

原発再稼働、安保法制など、個別の問題では政権に批判的な声が世論調査で確認されながら、選挙となると毎回与党側の勝利になるのはどうしてでしょうか。不正選挙だとか、小選挙区制度の問題だとか言っていても、選挙で勝たなければ不正をただす事も選挙制度を変更するのも難しいのが現状です。

選挙になると安倍政権はアベノミクスを持ち出します。焦点は経済発展と国民の暮しだと、土俵を設定します。この3年あまり、アベノミクスによって暮しが良くなったかと言うと、数字はその逆を示しています。にもかかわらず、なぜ与党が勝つのか。世界中で、新自由主義経済が人々の暮しを良くする事はないと言われながら、なぜ国民はアベの政治を否定しないのか。批判して来た側の弱点、オルタナティブを示せていない事について、経済を中心に考えてみたいと思います。

経済という分野は、私が最も苦手な分野の一つです。これまで、リベラル側(この分類もネオリベラルに対抗するものとしては不適当な気がしますが)からの批判をたくさん読み聞きしてきました。その主張の中心は、富の分配の不公平を論ずるものです。「1%対99%」という図式がその典型です。賃金制度による公平化、税制による調整・再分配、福祉による補整。いずれも、富をどのように分配するのかという視点です。「パイをどう切り分けるか」という問題に集中しています。

一方で、新自由主義の側は今も「パイを大きくする」事を主張しています。国民に向けて「あなたはパイを大きくする事に参加しますか。大きくすれば、あなたもたくさん食べられますよ」と呼びかけています。それに対して、新自由主義経済は必ず崩壊するという認識がある批判側の主張は、正常性バイアスの心理から入り口ではねられてしまいます。崩壊に直面する前から、崩壊予想に基づいて反対する人は少ないようです。この時点で、すでにアベ政治に負けているような気がします。多くの人は、明日もこれまでの暮しが続く、努力すれば少しは良くなると思いたいのです。それがウソでも、あるいはパイにありつけるのがたとえ1%だけであっても、新自由主義はとりあえず「富の生産と分配」を結ぶ主張をしています。そのシステムでは、多くの生産資源が奪い取られ、多くの労働力が使い捨てられ、多くの質が悪い量産品があくどい宣伝で売りつけられていようと、システムの中のどこかに参加していると思いたいでしょう。崩壊を予期しながらも分配を要求するという組み合わせは歓迎されません。だまされるという仕組みはこうして出来上がっていきます。

新自由主義が「富の生産と分配」を述べているのにたいして、富の分配に対する批判のみにとどまっていては、勝てないのも当然です。次回は、この点をすこし掘り下げてみたいと思います。


by maystorm-j | 2016-07-23 08:54 | 社会


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