2014年 06月 22日
一昨日以来、長野県佐久市望月の多津衛民芸館で、木彫の武井順一さんと二人展を開催しています。会場は、地元の教育者小林多津衛さんの100年余りの生涯を通じて取り組んだ平和運動と民芸運動の足跡やコレクションを展示する建物で、古民家の骨組みを再生した堂々たる建築が広々とした丘の上に建っています。コレクションは江戸時代に一般庶民が使用したと思われる染め付けの焼き物が中心です。 昨夜は10人ほどの人とともに、武井さん、民芸館館長の吉川さんと3人のトークセッションを2時間。工芸を地域社会の中で生業として続けることのいろいろな問題を語り合う予定でしたが、そこは少人数の近距離で話す空気の中で、話は縦横無尽に飛び交いました。工芸でも特に生活工芸の世界では、話がついつい進む方向性が決まっていて、「誠実に生きる作り手」が「使いやすい良いものをつくり」「心優しく暮らす使い手」がそれを求めて行く。というパターンがあります。民芸運動の時代から今日まで、綿々と続いてきた工芸の王道です。 しかし、そのように続いて来た暮しの工芸はいまや息も絶え絶えです。100円ショップや量販店に押され、デパートの工芸品売り場は硬直化し、お客様は高齢化しています。アベノミクスやTPPがこれから絶え絶えの命にとどめを刺してくれるでしょう。滅び行く景色のなかで、それでも自分は「清く正しく美しく」生きたと自画自賛しても仕方ありません。むしろ、それは次の世代に対して、良しと信じた景色が崩壊するに任せる無責任さかもしれません。 5万円、10万円の銅鍋を作っていて感じますが、ホームセンターで売っている5百円千円の鍋と較べて、100倍の価値があるでしょうか。デパートで売っている5千円1万円や、3万円の輸入鍋に機能的には負けない自信はあります。でもそれらの10倍の価格をつけています。それでも計算してみると時給千円の労働で、それ以下の価格では生業として成り立ちません。ぎりぎりの値段ですが、それは作る側の都合です。買って使う側がその価格差に納得していただけるか。そこにどんな価値があるのか。 ホームセンターの価格の10倍までは、技術と機能性で勝負する領域だと思います。そこから上は、デザインと幻想で勝負する芸の領域ではないでしょうか。使う人がワクワクするような夢を見ていただく世界。あるいは逆に矛盾を鋭く想像させる。それが芸の目指すところではないかと思っています。 会場へ出かける時間になりましたので、この続きは後ほど・・・
by maystorm-j
| 2014-06-22 08:33
| 社会
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