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2014年 05月 18日
ほんとうにだまされたのですか?・・・だまされる罪について考える
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写真はウスバサイシン。仕事場の事務室の外で咲いています。カンアオイの仲間で、漢方薬に使われます。葵と言えば、印籠に描かれた家紋を見せると、悪人が平伏土下座する場面を思い浮かべる人もいるでしょう。当事者で解決できない切羽詰まった曲面になると、お上の権威で解決して欲しがるのは困った国民性なのかもしれません。あるいは、キリスト教国やイスラム教国で「お上ならぬ御神」にあずけてしまうよりはましかとも思います。赤い表紙の毛沢東語録を振りかざされるのも真っ平ご免です。植物学でアオイ科というと、ハイビスカスやオクラも含まれるタチアオイの仲間で、カンアオイやサイシンとは全く別のグループです。

悪いのはちょっと上の「お上」、それを正すのはもっと上の「お上」。強い悪に虐げられる被害者に涙し、悪を伐つ超越者に喝采し、大団円で安堵する。一件落着、万事めでたし。テレビを消して変わらぬ日常、です。年寄りの「黄門様」は、中年の「倍返し」や「地上の星」、こどもの「ウルトラマン」。ついつい悪態をつきたくなるご時世です。

どこに書いたか忘れてみつかりませんが、原発事故の後、伊丹万作さんが亡くなる直前に書いた文章を引用して、「だまされる罪」について考えたことがあります。多くの人々が、戦争責任について書いた伊丹さんの文章を引用し、戦争を原発に置き換え、「原発安全神話」にだまされたことを悔い、だまされた自分の責任を反省していました。それに対して、一般より多少長く理科教育を受けることができた私は、原発の危険を知っていたし、安全神話にだまされることはなかった。それにもかかわらず原発を停める運動をしてこなかった罪は、だまされてた人の罪より重いでしょう。いつか大事故になる可能性を知りながら、とりあえず今日明日は大丈夫だろうと、根拠のないままサボっていたのです。本を読んでいても、積極的に発言していませんでした。

最近、自分も主催する側で参加した講演会で、一人の報告者が伊丹万作の文を紹介しながら、安全神話にだまされてきた罪について語っていました。最初に考えた時点から2年以上経っていますが、やはり今回も何か引っかかるものがありました。だまされる罪を言う人に聞いてみたいのですが、ほんとうに騙されていたんでしょうか。垂れ流される「安全神話」に一度も疑問を感じなかったのでしょうか。神話を語っているお上や学者が、正しい事を言う人達だと何の疑いなく信じていたのでしょうか。政治家は嘘を言うなんてことは、誰でも認識していたのではないでしょうか。

80年以上前に中国大陸で日本の軍部が起こした謀略と侵略が、もし現在再び起きたとしたら、当時の国民より現在の私たちには、その真相を見抜くことがはるかに容易だと思います。現在は事実を伝える媒体がたくさんあります。受取る側は、多くの人が小学校を卒業すると働きにでた昔に較べると、現在ほとんどの人が高校へ進学し、半数は大学に行きます。発行される本や雑誌の数は、100倍を越えるでしょう。事実を知り、真実を探す条件は今の方がはるかに整っています。騙されたのではなく、騙されていたかったのではないでしょうか。

3.11 の後、たくさんの人からマスコミは本当のことを言わない、テレビは嘘を言う、という言葉を聞きました。でも、その後もテレビを見続けてはいませんか。自分から情報を採りにいき、その真偽を見分けるには時間と能力が必要です。インターネットから情報を受け取り、その裏付けを確認し、多くの情報を整理し事態を構造的に理解する作業は、それなりの時間を要し、勉強しなければなりません。3.11 以後、はたしてパソコンの普及が進んでいるのでしょうか。むしろ逆に、簡便なスマホに移っているように思われます。スマホの小さい画面で情報を受取る行動には、マスメディアから垂れ流される情報と同様、じっくり精査し裏付けを取ることがないように感じます。特に、多くの情報から自分の考えを組み立て、文章化して発信し、それをふたたび検証するというサイクルは出来にくく、ツイッターのように短文で直情的な言いっぱなしの発信になりがちです。

自分が騙されていたと言い切ることには、どこか自己欺瞞の匂いがします。気づいていることを見ないことにしていたのではないでしょうか。気づいていることを認めるとやっかいなことになります。楽しい日常の時間が奪われます。騙されていることにする方が生き易いことはあきらかです。でもほんとうは騙されていたんじゃなかった、「わかっちゃいるけどやめられない」だったことを認めませんか。

by maystorm-j | 2014-05-18 08:00 | 社会


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