2013年 08月 27日
![]() なんともウフフ!?な絵です。そして、なんとした事か、買ったのです、この絵。描いたのは伊野孝行さん。40代前半のイラストレーターらしい。旧軽井沢の酢重ギャラリーでこの夏、個展をやっていました。「画家の肖像」というシリーズの一点です。他にもたくさんの画家を温かく描いた絵が一冊の本になっています(¥1,600)ので、興味のある方はご連絡ください。 購入した原画は、私の本業で中くらいの鍋を一つ作ればなんとか買える価格です。川に車ごと転落して水没したカメラを、一年余り散々迷いながらやっと買ったカメラとほぼ同額。ところがこちらの絵は10分で即決。メーカーとスペックと価格と安売り情報を見比べながらやっと決めたカメラにくらべると、なんたってこの絵は世の中に一つしかない。欲しいかいらないか、どちらかの選択しかありません。 鍋一つ分の価格というのには、落とし穴があります。鍋ひとつ作るのはそれが長年の仕事ですから難しいわけはありませんが、問題は鍋を一つ余分に作ってそれを売らなければならないことです。なんて事を考えていたら身動きがとれなくなりそうですから、衝動に身を委ねるのがいいのでしょう。 ついでに少し考えます。「ゲージツ」は鑑賞するものか?所有するものか? 健全な日本人の多くは、金持ちに独占され秘蔵されるよりは美術館やイベントで公開されて、万人の眼に触れることを望むでしょう。海外から名作がやってくるたびに、上野辺りには猛暑・寒風をものともせず、長蛇の列が出現します。何億、何十億という価値がある名作をほんの10分程眺めて、それでもその後長く続く感動を反芻する事を否定するつもりはありません。表現の受け手の幸せは、人それぞれです。 芸術表現には、所有者、鑑賞者の他に創作者がいます(いました)。伊野さんはゴッホの肖像をたくさん描いています。ゴッホの絵は、生前まるで売れなかった事はご存知のとおりです。弟の存在でかろうじて描き続ける事ができた、かすか奇跡に支えられてゴッホの絵は残り、いまはその兄弟が知ったら気絶するような価格になっています。 僅かなお金を出して、創作中のゴッホの絵を買う人が何人かいたなら、と思いませんか。自分が豊かになるだけでなく、世界が豊かになったと思いませんか。評価の定まらない科学研究の投資するのとは違い、絵は好き嫌いで決められます。株のように、毎日数字に一喜一憂することもありません。 私は4〜5点しか絵を買った事がありませんので、大きな事を言うのは恥ずかしいのですが、名作展に行列する人と、人知れず好きな絵を買う人の違いは、劇場型民主主義と参加型民主主義の違いに似ていませんか?
by maystorm-j
| 2013-08-27 07:47
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