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2012年 07月 02日
大飯原発前「再稼働反対」行動の検証  7月2日 2012年
大飯原発が再稼働され、57日間続いた原発全停止状態は終りました。原発の電気だけを拒否する事も出来ません。逆に原発の電気だけを買うこともできないので、再稼働を支持した人にしても、特段のありがたみがあるわけではないでしょう。事故によって引き起こされた被害を実感している人以外は、生活感覚の乏しい選択を突きつけられたのかもしれません。

首相官邸前の抗議行動について、シングル(ワン)イッシューに集約する事の問題点を、前に書きました。昨日7月1日大飯原発前で行われた再稼働反対行動について考えてみます。現場の映像はIWJのサイトで見る事が出来ます。

大飯原発の現地で、再稼働の日に行われた行動ですから、再稼働反対のシングル・イッシューになるのは当然で、ほぼ終始「再稼働反対」のシュプレヒコールがたくさんのドラムの音を背景につづけられました。官邸前が多くの団体の連携によって招集・運営されていたのに対し、現地に集まった400人前後の人々は,個人、家族、小グループで三々五々集まってきたようです。ただし、最後に解散する際の様子から考えると、何らかの運営グループが事前に存在したか、あるいは自然発生したかという事は考えられます。明るいうちは子連れの参加もかなりあって、警備する機動隊との衝突に巻き込まれないかと心配するツイートが多く見られました。ドラムに合わせて踊っている若いコアグループとの間に、特に断絶があるようには見えませんでした。

何度か、機動隊側が横隊編成のまま押してきたり、サイドを一時突破した事はあり、緊張する場面がありました。その度に、抗議する側は機動隊に背を向けて両手を高く挙げ、暴力行動を行わない意思表示をしながら、押し返していました。その接触を「機動隊による暴力的弾圧」と表したツイートがありましたが、私には機動隊側も実力行使を予定していないように見えました。

映像で全部が見られたわけではありませんが、機動隊の規模も装備も、実力排除や大量拘束を狙ったものではなかったと思われます。警官の顔を一人一人映像で見ていると、最強の実力部隊員ではなく、学徒動員を思わせる冷静な部隊編成の印象がありました。もちろん、放水車や催涙弾どころか、警棒さえ使う事を想定していなかったように見えました。基本的にはただブロックする事だけが目的だったと思われます。

抗議側も、最初から「再稼働阻止」ではなく「反対」であって、構内乱入・実力阻止などはこれっぽっちも考えていない態勢・服装ですので、双方に抑制がきいていたと思われます。むしろ有形無形の意思疎通があったと考える方が自然です。関電と政府側は封鎖された道路を強硬突破して事を荒立てるより、当初から船で入構を考えていたのでしょうし、抗議側も再稼働を実力で阻止できない事は重々承知しているわけですから、あえて傷つく方針をとらなかったのは当然でしょう。これを馴れ合いと非難する事は不当で、示威的、象徴的行動であったということです。

しかし、象徴的行動としてあの表現形態で良かったのかというと、はてな?という感じが残ります。延々と20時間近く(あるいはもっと長く)映像が全世界に流れたのですが、その間のどこを切り取ってもほとんど同じドラムと踊りの繰り返しです。時おり押し合いがあり、短時間のインタビューもありましたが、全体としてははたして誰に何が伝えられたのでしょうか。やむにやまれない気持ちで遠路駆けつけた人々の心からの言葉こそ聞きたかったと思います。

多くのサウンド・デモの映像をこれまでも見ましたが、演奏し踊っている人の陶酔感ばかりで、伝わってくるものが乏しく、参加者同士のコミュニケーションもままならないように思います。政治課題に暮しの側からどう向き合い、どう変えていこうとするのか、大切なことが見えてきません。ただただ「俺たちは怒っている」という感情の発露だけにしか見えないのが、もったいないと感じます。

by maystorm-j | 2012-07-02 21:26 | 社会


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