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2012年 06月 25日
森(緑)の防潮堤について/強度の検証と郷土の設計図が見えない
震災瓦礫のうちの可燃瓦礫を全国にばらまいて焼却し、汚染が濃縮される焼却灰を各地で埋め立て処分させようと、政府は強力に進めています。その目的とするところは「震災瓦礫広域処理は放射能アレルギーの減感作療法/Twitter Maystorm Journal 3月11日〜20日 まとめ」に書きました。海外の「原子力先進国」では、放射性物質をやたらに移動させることは非常識、という指摘もその通りだと思います。

このような、言わば総論的捉え方の一方で、震災瓦礫は福島県から岩手県の海岸に広く発生し、その放射能汚染濃度はいろんなレベルがあります。瓦礫を抱えている被災自治体の事情も様々で、自力処理が可能と言っているところもあれば、広域処理を望んでいるところもあります。自力処理が可能なところでも、焼却場の性能によっては汚染を地域に拡げる可能性もありますし、セメント工場で利用するという「妙案」でも、セメント製品の検査は行われていますが、環境への放出は不明な部分があります。

受け入れる側も一様ではなく、関東圏のように岩手・宮城よりも汚染が高い地域もあれば、ほとんど汚染されていない九州もあります。広域処理の目的が効率的・合理的処理にはないので、運送費等コストパーフォーマンスや施設の性能、環境への影響など、本来事業として検証すべき事柄が無視されています。さらに問題なのは、焼却しても放射能は消えず、数十倍の濃度に濃縮されて灰の中に残ります。その灰の処分・管理方法が自治体や業者まかせで、環境への漏出が予想される埋め立て処分とされている事です。

一石二鳥を狙う森の防潮堤計画、その問題点
被災地と受け入れ地の双方にいろいろな問題点があり、それについて議論を深める事が望まれますが、利害の衝突を避ける一石二鳥の解決策として登場したのが「森(緑)の防潮堤」計画と言えます。宮脇昭氏が主張するその計画は、木質の瓦礫もコンクリート瓦礫も土と混ぜて土塁を築き、その上に氏がかねてより潜在自然植生と呼んでいた照葉樹を植えて防潮堤とするものです。

植えた木の根が深く土塁に入り、コンクリートの塊を抱いて抜けにくくなり、津波にたえられるといいます。私は土木工学をきちんと学んだことがないので、その強度について積極的に論ずる事はできませんが、山林に降る雨では、高い密度で木に覆われた傾斜地は裸地に較べて、流下する水に浸食されにくい事は確かです。しかし、軽い木質瓦礫を含む比重の軽い土塁が、雨水の流下とは桁違いの大きい量と衝撃力をもつ津波に耐えられるかは、全く異なる強度計算と試験が必要な事は想像出来ます。

混入した木質瓦礫が分解すれば植栽樹木の肥料となり、土壌は空隙が多くなって樹木の生育に適していると主張しています。一般的にはその通りですが、津波に対する土塁の強度となると、まったく異なる想定も必要でしょう。フカフカした森林の土壌は水が浸透しやすく、保水力が高いので山林では好ましいものですが、土塁としては冠水した際には急激に水が浸透することで強度が落ちる可能性があります。特に津波の前に大きな地震動があれば、内部構造が均質ではない土塁に多くの亀裂が生じてさらに水が浸透しやすくなるでしょう。

もともと柔らかく比重の低い土塁に水が浸透すれば、津波の第2波・第3波に対して強度が下がるだけでなく、水が堤体を越えた場合には浮力が生じて、水平方向の力に抗しきれなくなります。越流水で土塁の陸側が洗掘される可能性もあります。それに対して、ネットを被せるという珍案がでていますが、100年先まで考えているのでしょうか。前例のない提案ですので、調べてもこれらの強度については資料・データが見つかりません。類似する堤体で水を貯めるアースダムやロックフィルダムなどから類推する事も、考える材料にはなります。

防潮堤の高さと体積、瓦礫の量
津波が堤体を越えた場合には、強度が弱まり、引き波や第2波・第3波に耐えられる保障はなく、堤体が崩壊した場合は樹木・土砂・コンクリート塊を含んだ土石流の状態で市街地に流れ込み、被害を大きくする可能性もあります。やはりフィルダム同様に水が越えない高さとすることが前提ではないかと思われます。その高さを20mとするのか30mとするのか、仮に20mの高さで底辺を50mと想定してみます。断面を三角形としますと、断面積は500平方mとなり、延長1kmでは体積は50万立方mとなります。提唱ではかまぼこ型のマウンドと言っていますのでもう少し大きくなるでしょう。

土と混ぜてつくるのですから、瓦礫の割合が2割では10万立方m、4割ですと20万立方mの瓦礫が埋められます。宮脇氏は東北から北関東まで総延長300km大堰堤・ホンモノの森を提唱していますが、100kmで瓦礫1000~2000万立方m埋められます。この計算にはいくつもの仮定があり、大雑把なものですが、震災瓦礫全量が2千数百万トンで比重を仮に2としますと体積はその数字の半分、3としますと3分の1になりますので、比較する目安にはなるでしょう。全量を埋め立てられるわけではありませんので、実際には多くても数10km分の瓦礫しかないという事になりそうです。

被災地では土が不足
この計画に従えば、瓦礫は簡単になくなってしまいそうですが、もう一つ問題があります。マウンドは瓦礫だけで造れるのではなく、瓦礫の何倍かの土を必要とします。現在、被災地では津波で流された田畑の再生や、沿岸部の地盤沈下埋め戻しで、大量の土が必要になっているようです。山から土をとって運んでいるようですが、土の価格も上昇していると言われています。山の荒廃を防ぐためにも、無制限に土がとれるわけではありません。放射能汚染の程度が問題にならないレベルであるなら、瓦礫は地盤沈下部に埋め立てることが先のようにも思われます。

郷土の設計図が見えない
ここまで、森の防潮堤計画について、直接の疑問点を書いてきましたが、それ以前の問題として、その地域を今後どのように再建していくのかという出発点が語られていないことに気づきます。森の防潮堤に限らず、コンクリートの防潮堤もその高さが、防潮堤で守るべき町の見取り図が描かれないままに議論されています。高台に移転するのか、沿岸部に水産業、工業なのか、住民自身が描くべき未来像を置去りにして防潮堤が上から語られている気がします。

住民がもとの松原を再建したいのであれば、その内側を海浜公園として、居住区域や産業地域との間に国道や鉄道をかさ上げして防潮堤とする事も考えられます。大きな町ではホテルや商業施設、公共施設を高層化して防潮機能を持たせる事もあり得るでしょう。いずれにしても今後何百年も産業・文化・歴史をつくり続ける郷土の設計が先で、3年か5年かという瓦礫処理に振り回されているのは、広域処理にしても、森の防潮堤にしても、さらにコンクリートの大防潮堤にしても、一部のゼネコンや大企業を潤すだけではないでしょうか。

この後に、森(緑)の防潮堤について書いたTwitter の記述を早いものから順に掲載します。

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3月25日
緑の防潮堤という提案がある。森に憧れる都会の人には受けが良いだろう。比重の軽い木材や可燃物瓦礫を含み空隙の多い土の山の強度は?地下水脈のない人工の山に植えた木の根は深く延びるのか?塩分の影響は?充分な強度がなければ、津波は緑の防潮堤を崩して土石流の状態になり被害を増やさないか?

ロックフィルダムという工法。岩を積み上げたダムで、コンクリートの巨大防潮堤のような従来のダムとは異なる。岩の間に水が浸透すると浮力が生じるため遮水が重要。津波の第一波が緑の防潮堤を乗り越えた時に生じる浮力。第二波、第三波で土と瓦礫と木の山が浮き崩れれば、海水は土石流と化す可能性。

5月1日
緑の防潮堤計画。土木工学上強度の裏付けがあるのか?木質瓦礫を含む堰堤を津波が越えれば水が浸透。浮力が生じる。第2波3波に耐えるか?余震で液状化しないか。福島では震災でアースダムが決壊、7名犠牲。アースダムやロックフィルダムでは水の浸透を防ぐ事が重要。決壊すれば土石流状態で被害増。

陸前高田の松原は津波で流された。宮脇昭氏は、松を植えたのが失敗だと言う。岩手・宮城の海辺でたくさんの松を見た。磯に続く岩場に根を下ろした松は津波に耐えた。高田の松原は砂浜。広葉樹なら残ったのか?塩分の地下水へ深く直根を伸ばしただろうか?白砂青松が自然に適応した歴史も破れた歴史も。

5月2日
田老の破壊された防潮堤。鉄筋は見えなかったが入っていたのか?重力を頼りに積み上げられただけなら、水が堰堤を越えて浮力が生じた可能性。時速100kmでぶつかる水の壁に、宮脇昭氏、青山貞一氏と池田こみち氏の提唱する防潮堤が耐えられるのか?実際に波をぶつけるモデル実験と強度計算が必要。

緑の防潮堤。堰堤は水を浸透させない事が基本。フィルダムなど粘土を突き固めで不透水性の中心部を作る。木質瓦礫を混ぜてグサグサの堰堤に地震動で亀裂が入れば、津波の水は容易に浸透。青山貞一氏のモデルではコンクリートで囲われた瓦礫の上に緑の堰堤。下段のコンクリ構造も上段の土盛りも強度は?

防潮堤の強度は次の災害で住民の命に直結する。綿密な強度試験必要。瓦礫処理と一石二鳥という発想自体が安易すぎる。コンクリート瓦礫を石材として使うのは解るが、まず考えるべきは町の基本設計。環境大臣がパフォーマンスで出る問題ではない。大槌町のモデルに津波をぶつけてテストする事は不可能。

宮脇昭氏の考えは潜在自然植生・極相林をホンモノの森とする。究極の状態が強く正しいと。草原や陽樹林など遷移の途中はニセモノ。微地形・微気象に適応する多様性は視野の外。自然観に違いはこの際おくとしても、タブ等の被覆で土と木質瓦礫の堰堤は津波越流水による洗掘に耐えるのか?人命に関わる。

5月3日
宮脇氏が植えて津波に耐えたモデルと紹介する多賀城市のイオンを訪れた。幅1~2m、長さ数10mの低い土塁にまばらな照葉樹の列。一部は損壊? 海から約1km、海側には屋根付き駐車場。実証例とするにはあまりにもお粗末。スギ林は津波で流されたと言うが、塩水で立ち枯れた多くのスギを見た。

宮脇昭氏の緑の防潮堤を批判してきた。根底には自然観の違い。究極の森を是とするか、変遷と混沌を楽しむか。人生の大半、もの作りを生業としてきた。これこそホンモノと言える出来上がりはない。明日はもう少しましなものをの連続。業界の頂点にはわれこそホンモノと言う巨匠・鉄人・職人がひしめく。

5月7日
緑の防潮堤。何度も言うが、その強度を土木工学から検証したのか?ネットを検索しても言及がない。原発安全神話と同じ楽観と願望。浸水しやすい軽い土塁が繰り返す津波と余震で崩壊すれば、海水だけの津波より大きい破壊力に。モデル実験と強度計算を徹底した上でなければ、人命に関わる無謀な提案だ。

5月10日
緑の防潮堤とホンモノの森がネットに溢れている。宮脇昭氏はホンモノの森のモデルは鎮守の森だと言う。鎮守の森にも人手が入っている。いきもの達は環境や時間の流れに応じ、多様かつ変化し続ける。本物という状態があるのか。生物多様性を声高らかに主張しいていた生物学者も行政もなぜ沈黙するのか?

6月1日
10年ぐらい前、ある市民大学で某大学の先生が、森は炭素を貯めると話した。どこにどんな形で貯めるか聞いたら、土の中にとの答え。砂礫地に新しく発達する森や低温で分解せず泥炭などが発達するならともかく、エコロジー派が好きな安定したホンモノの森(極相林)では、炭素の収支はあまり変化しない

森が炭素を吸収するという人は、森が無限に拡大すると言うのか。重力があるため、垂直方向には限界がある。スカイツリーが林立する森は出来ない。水平方向に拡大すると食料生産の場を失う。便利な里山・低山は木材などの生産の場に、奥山は多様な生態系と水源林や保安林に、高山は保全を軸に整備を。

里山復活は都市近郊の話。地方では野生動物被害が増加する。薮を刈ったぐらいではサルも防げない。薪炭生産も大規模には無理。里山・低山帯は木材生産を中心に。輸入に頼る限り、紙と木材需要で熱帯雨林破壊。日本の低山帯は熱帯雨林より高い生産力。資産寝かしの零細民有林を商業ベースにのせる必要。

6月6日
荒れ地、火砕流、山火事の跡に先駆性植物が芽生え、陽樹が育ち遷移を繰り返し極相林へ。しかし地形・水系・微気象、多様な環境に適応し、遷移の途中段階の植物相も残り、多様な動物相を保持する。所かまわず究極の森、ホンモノの森を植えるのは移り行く自然の豊かさを知らないもの。そんな社会も危険。

奇跡の一本松と言われた陸前高田の松原に対し、森の防潮堤提案者はそこにマツを植えた事が間違い、一本松は失敗の象徴と言う。根が深く入らないマツは、津波で根こそぎ流されたと言う。しかし調査では、2〜300年生の太いマツは幹の途中からへし折られ、若いマツが根こそぎ流されたという報告あり。

海岸の砂浜に広葉樹なら深く根が入ったのか? 根の伸びは土壌、地下水位や地下水の塩分濃度にも関係する。ショウロ菌と共生するマツを勧める研究者もいる。数年単位の課題である瓦礫処理問題とは切り離して、100年単位で海岸林.海岸の利用方法、景観の問題は科学的合理性と住民の希望で考えよう。

潜在自然植生によって構成されるホンモノの森、究極の森をつくろうという考え方には、どこか優生思想、民族浄化思想につながるものを感じる。究極のゴールを目指して走るのが自然なのか、人間なのか? 置かれる環境、生まれる境遇は様々。出たとこ勝負の出来心、私の性にはその方が合う。

6月7日
瓦礫の広域処理。基本的には自治体の自治の問題で、住民の合意で進めることだろう。しかし国が定めて守られてきた放射性物質の取り扱いに関する法律に抵触するならば自治体で判断するのは不適切。健康や命の問題で基本的人権を犯す可能性があれば多数決になじまず、少数者や個人の拒否権を考慮すべき。

6月10日
地元では各地で焼却した汚染灰を埋め立てる民間処分場が問題になっている。瓦礫焼却の是非はまだ各地の住民間で一致していない。しかし環境から回収し焼却濃縮した毒物を、長年月の管理が出来ない形で環境に再び置くのでは危険を冒して焼却した意味がない。地元にある汚染土壌、植物等の処理法も不明。

地球は温暖化しているか?温暖化は二酸化炭素増加のせいか?温暖化は良くないことなのか?様々な角度から検証が必要。日本だけが二酸化炭素減少に取り組んでいるという主張があるが、米・英・独・日の中でこの30年間、一次エネルギー消費量と二酸化炭素排出量が増えているのはなぜか日本だけだ。

6月17日
津波被災地の町の設計が決まらないうちから、防潮堤の高さを住民に決定させようとしている。急ぐ理由はゼネコンへのばらまきか。浸水区域の再開発。居住するのか高台移転か。農業・水産業か、工場誘致か、観光か、海浜公園か眺望と景観か。土地の利用方法によって、どこまで強固な防潮が必要か異なる。

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by maystorm-j | 2012-06-25 08:05 | 社会


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