2011年 04月 07日
封じられる自由 その5・・・学校再開でおびやかされる安全な避難  4月7日 2011年
これまで、震災現場の医療や避難者のお世話に活動している団体の支援カンパを紹介してきました。災害直後は即効性のある支援活動が重要と思ったからです。一方で公的に行われている義援金は、総額1500億円に達しているという報道があります。これから分配方法の検討を始めるそうです。阪神の震災以来、公的な義援金の動きがとても遅いことは、国内ではよく知られています。しかし、海外からも大勢の人々がたくさんの寄付を送ってくれています。その人たちは、報道される災害の強烈なありさまに、やむにやまれない気持ちで支援を送ってくれたと思います。被災者にまだ一円も届いていないことを知ったら、どんな気持ちになるでしょうか。避難生活の中で、凍死や病気が悪化して死んだり、健康を維持出来ない状態が,今も続いています。

災害の進行が止まっているわけではありません。原発からの放射能汚染は進行し続け、汚染水の海洋投棄で災害のレベルはさらに一段高くなりました。前に「公害」と呼ばれるものは、実は加害企業の「私害」であり、監督すべき行政による「行政害」と書きました。今回の海洋投棄は、その構造が短い時間の中に明確に現れたものです。3人の作業員が建屋内に溜まっていた汚染水で被曝したのが、3月24日ですから、高濃度の汚染水を除去しなければならないとわかってから、10日以上になります。その間、大勢の技術者やインターネットで、タンカーや艀(はしけ)の使用が提案されていました。(例えば、後藤政志さんの解説)参照。 米軍からも、冷却のための水を運んだ艀の転用が了承されていると報道がありました。搬出したいのは低レベルの汚染水ということですから、可能性のある対策はいろいろあったでしょう。政府は、静岡にあるメガフロートに固執しました。その案に対しては、当初から改造や曳航に時間がかかる事は指摘されていました。巨大なメガフロートを引っ張っていく映像を想像して、その報道効果に酔っていたのでしょうか?

被災地では、学校が再開され始めています。復興の明るいニュースとして、報道されている事でしょう。ほころび始めたサクラの下を、うれしそうに登校する子どもの映像が流れているのではないでしょうか? しかし、各地に避難している児童・生徒は、避難先に転校するか、地元になんとかして戻るかの選択がせまられた事が想像されます。もとの学級に戻って、仲間に会いたいでしょう。地震の被害と違って、津波の被害は、同じ市町村内でも津波が到達したかどうかで極端に被害程度が異なるでしょう。学校自体が使えないところも多いでしょう。どこまできめ細かい対応ができているのか、明るい面だけの報道からはわかりません。

特に、原発の周辺では、学校の再開が本当に安全なのか気にかかります。周辺では多くの人々,特に子どものいる家族が「自主避難」しています。人口が半分以下になっている地域が広がっているようです。しかし、文科省・教育委員会は学校の再開を強行しています。自主避難している人は勝手にでているのだから、戻ってくればいいということなのでしょう。放射能の影響を強く受ける子どもに、「学校が始まるよ」というのは、保護者につらい選択をせまるものです。たとえばいわき市では、市議会議員の一部が教育委員会に2ヶ月の休校を求めましたが、市側は再開を強行しています。いわき市議会議員 佐藤かずよしさんが4月3日東京で状況を報告した映像が、原子力資料情報室のサイトで見られます。

いわき市は福島県の浜通南端にあり、人口・面積ともに福島一番の大きな市です。市内の場所によって空間放射線量にはばらつきがあるでしょうが、合同庁舎で一時間ごとに測定されていて、4月6日の値は、0.41~0.59 μSv/h です。日を追って少しずつ下がってはいますが、場所によってはもっと高いところもあるでしょう。仮に0.5 μSv/h として、24時間では12 μSv。3ヶ月では1000μSv=1mSv を越えます。この数字は、一日中外にいた時とされていますが、閉め切っていられる冬とは違い、木造住宅では外からの放射線の侵入をあまり防げないとか、大勢の子どもが通学途中で付着した放射性物質をそのまま校舎内や家に持ち込む可能性や、エアコンを使えば外気が入り、窓を開ければ風が入るので、政府が言うように屋内では10分の1になるという事は期待出来ません。まして、原発の現状は、水素爆発の可能性があり、格納容器に窒素を入れようとしているぐらいですから、いつまた大量の放射能が大気中に放出されるかわかりません。

放射能の許容基準について政府は、空気・水・野菜・海水・・・様々な数字のからくりを駆使して、「安全」を連呼したり、危なくなると数字を変えようとしています。さきほど3ヶ月という半端な計算をしましたが、それは「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律や労働安全衛生法令による管理区域 」の設定が、放射線量3ヶ月あたり1.3mSv を基準にしていることと、較べるためです。放射線管理区域というのは、身近な例では、病院でレントゲン撮影をする時、隣のドアに黄色と黒の標識が貼ってあって、厳重に立ち入りが制限されている場所です。先ほどのいわき市の3ヶ月で1mSv というのは空間放射線量だけですから、これに放射性物質による体内被曝を加えて考える必要があります。

危険性の基準というのは、医療被曝(レントゲン撮影など)のように本人が危険承知である場合と、判断出来ない児童がなかば強制されている場合とでは、当然後者の方が厳しい基準を課さなければなりません。保護者につらい判断を求め、子どもに危険のつけをまわすことになる、復興したふりを装うことはやめて、しばらくようすを見合わせた方が良さそうです。

放射線管理区域との比較については、中部大学の武田邦彦さんのサイトを参考にしました。

追記
いわき市を例に書きましたが、福島第一原発に近いところでは、汚染の程度はさらに高くなります。このところ政府は小出しに、20km 圏の外でも汚染の激しいところには、避難指示を出す可能性を口にしています。すでに相当の被曝をした後で、今頃になってという気がしますが、これまで安全だと言い続けてきたこと破綻したという事です。すでに避難している人にも、より遠方に避難する前に、貴重品をとりに一時帰宅を認めることを検討しているようです。

フランスから、3月17日に放射線防護服1万着(2万着という報道も)が送られたが、外務省に放置されたままになっていた事が、国会で問題になったようです。日本の官僚は有能だという人が多いのですが、専門外の事・前例がないこと・想定外の事に対応する能力は欠けているようです。一時帰宅をする人や屋内退避地域から避難する人に、防護服を着せてほしいものです。
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by maystorm-j | 2011-04-07 05:46 | 社会 | Comments(0)


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