2011年 04月 04日
封じられる自由 その2・・・自縄自縛のマスメディアと新しい媒体の可能性  4月4日 2011年
地震と津波の直後は、福島原発から直接出る空間放射線による被害という報道が多く、発表される放射線量は「ただちに健康に影響ない」という政府の見解をマスメディアはそのまま垂れ流していました。しかし各地でその後、飛散した放射性物質による放射能汚染が明らかになり、空気・水や農産物の汚染からの内部被曝の危険性が問題になりました。時間の経過とともに、周辺地域では空間放射線被曝量の累積も、基準こえる値となっています。マスメディアとは対照的に、以前から原発の危険性を発信してきたいくつもの団体がインターネット・メディアを通じて、原発事故発生の直後から、放射能の影響を伝えていました。その中で、私の乏しい知識と経験からですが、論理的合理性があり、現実に起きている事象を説明できると思われるものを選んで紹介してきました。

この1週間は、高濃度に汚染された水が原発から海に流れていることが明らかなっています。海では大量の海水に希釈されて、汚染濃度は問題にならないと政府は発表していますが、外洋の海流とは違い、陸地に近い沿岸流は複雑な動きをする事があり、汚染が北に広がった場合、三陸海岸のようなリアス式海岸は複雑な海岸線や海底地形のため、単純に拡散・希釈するという希望的観測には無理があります。今後、沿岸の養殖水産業への影響が考えられます。さらに、海のプランクトンや植物、それを捕食する魚などの食物連鎖をとおして、汚染濃度が濃縮されることも考えられます。しかし、空間線量は数万円の計器で簡単に測定出来ますが、海水中の放射性物質の種類と量は専門の分析施設でも時間がかかり、民間人が測定し警告を発する可能性は低いでしょう。陸上の汚染以上に、正確な発表と報道は期待できませんが、今後は海外の政府やメディアからの警告や非難が増えると思われます。

原発による放射能汚染は、平時であれ事故時であれ、「絶対安全」を標榜してきた電力会社と推進・監督してきた政府に責任があります。その点は、あらゆる「公害」汚染となんら違いはありません。「公害」は発生企業の「私害」であり、監督官庁の「行政害」であることは、水俣病をはじめ半世紀以上にわたる公害の歴史が証明しています。しかし,広告収入に頼るマスメディアは、その基本を忘れたふりをしています。

3月31日の東京電力首脳の記者会見の動画中継を、Web Iwakami で見る事が出来ます。田舎暮らしの私にとって、抜粋や編集されていないこのような1次資料は貴重で、2時間におよぶ会見を、仕事をしながら3回ヘッドフォンで聞きました。事故発生直後の社長会見からずいぶん経っての久しぶりの首脳会見で、直前に入院した社長にかわって、会長と副社長ほか数名が一列にならび、謝罪で始まりました。目に見える表情と内心は違うでしょうが、さっぱりした表情の会長には苦渋の陰はなく、余裕を感じました。東電で毎日何度か行われている、マスコミと広報のなれ合い記者会見にくらべると、いくらか突っ込んだ質問がでますが、司会と指名を東電側が行っていることもあり、ひとつの課題を続けて追及する事ができず、通り一遍の解答で終ってしまいます。

日経新聞の記者が質問で「会長様」「社長様」と言ったのには、日頃のメディアと業界の関係がよくわかり、その正直さに苦笑しましたが、全体の調子も、加害企業の責任者に対する質問というより、首相や大臣に対しているようでした。今後、記者会見で質問するマスメディア記者は、最初に所属と氏名を名乗る時に、「電力会社から年間X億円の広告料をいただいているOO社のXX記者です」と言ってほしい。ついでに言いますが、マスメディアで解説する学者も「電力会社からX億円の研究費をいただいているOO大学の」と名乗ってほしいものです。少し古くなりますが、The Journal に、3/21 TBS の金平茂紀さんが「私たちは大震災と原発惨事のさなかで何を考えるべきなのか?」という題で、災害現地で考えたことを書いています。「報道の自由」は、奪われるものではなく、自ら捨てていくものだから、報道を受け取る側に見えにくく、それだけに恐いと言えます。同じThe Journal 3/31 高田昌幸さんの「原発事故報道と戦前の新聞」もあわせて読んでいただければと思います。

昨夜は夜中まで、元原子炉設計技術者である田中三彦(光彦?)さんと後藤政志さんをゲストにむかえたSoftBank 孫正義さんのSoftBankCorp 「東日本大震災について」のUSTREAM 中継を見ていました。2時間におよぶ番組で、前半は田原総一郎氏がうるさくて聞きづらいのですが、途中でいなくなりますので、時間のある時にご覧いただければと思います。数万人が見ている可能性があり、並行して表示されるチャットを見ていると、それまでテレビで言われてきた事との違いに驚く視聴者が多い事に気づきます。チャットの言葉遣いは乱暴ですが、受け取る側の感性が意外に鋭いと感じました。孫正義さんはかなり思い切った政府批判を語りますが、今朝のマスメディアでは、孫さんが私財100億円と生涯役員報酬の寄付を表明したことだけを報道しています。

追記
楽天の三木谷 浩史さんも10億円の寄付を表明していると報道されています。新しい媒体を駆使して新事業を開拓してきた彼らは、NTT や既成の業界、時には司法からも叩かれ続けてきました。社会的影響力のほとんどない私がいくら政府批判をくりかえしても、石の一つも飛んできませんが、経営感覚の鋭いであろう孫さんが政府批判を公然と行う事は、けっして簡単な事とはいえないでしょう。被災者支援の思いを疑うものではありませんが、私財を投げ打って「批判する自由」を買ったと考える事もできます。広告費をもらって「報道の自由」を売り渡しているマスメディアと対比して見ようと思います。

追記2
孫正義さんのUSTREAM の中で、原子力発電の電力供給に占める割合が30% だから、簡単にはやめられないという議論がありますが、原子力発電は出力調整が困難なため、動かし始めたらフル稼働させるので、火力・水力に優先させて稼働させて、その結果比率が高くなります。3月28日の記事「国策として進められた原子力」に書きましたが、休止させている火力・水力をフル稼働させると、電力の総需要はまかなえるでしょう。ピーク時の不足の可能性があるという指摘もありますが、ガスタービン発電の増設でのりきっていく間に、地域のコージェネ(電熱併給発電)や再生可能エネルギーに転換していく事は可能と思われます。

追記3
海の汚染が北へ広がった場合、複雑な地形の三陸海岸では単純に拡散しない可能性を考えましたが、その後茨城県沖のコウナゴ(イカナゴの稚魚)の汚染が報告されました。親潮分枝(寒流)が南下しているのでしょう。暖流の黒潮と寒流の親潮がぶつかるところでは、季節や年のよって複雑に変わるようです。
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by maystorm-j | 2011-04-04 05:24 | 社会 | Comments(0)


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