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2011年 04月 03日
封じられる自由 その1・・・放射能拡散予測の不在と気象学会の統制 4月3日  2011年
福島原発から出た放射能の拡散状況と対応の発表について、日本の政府・マスメディアと外国政府・メディアの間に、大きな開きを感じている方が多いと思います。外国政府や大使館が自国民に対し、早めの避難を呼びかけるのは、反対に海外で災害や暴動・内戦がおきた時に日本政府・外務省が日本人の避難や旅行自粛を呼びかけるのと同じで、とりわけおかしいとは思いません。問題なのは、その背景に充分な情報が開示されていて、政府の指示と自分の都合を考え、自己判断ができるかどうかです。汚染のさらに厳しい地域で、強制避難などのより強い措置が必要となる場合も、情報が開示されていることが避難対象者の納得を得る上で必要なことです。このことは、病気になった時の、インフォームド・コンセントセカンド・オピニオンと同じだと思います。

ヨーロッパのいくつかの国では、気象庁にあたる機関が数日間の放射能拡散予測を発表している事は、前にご紹介しました。( 例えば、ドイツ気象庁の 福島第一原発からの放射能放出の予測 ) もちろん日本も同様なシミュレーション・システムがあって、SPEEDI (緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム) と呼ばれています。海外からの発表しか受け取れない不満が広がり、政府は3月23日になってから、様々な言い訳のコメントをつけて、事故後12日間に拡散した放射性ヨウ素に限った累積予測を発表しました。それまで原発からの距離により汚染の可能性と避難の必要性を同心円で説明していたのとはかなり違い、風向きや降雨などを考慮しなければならない事が周知されました。しかし、その後10日以上発表がなく(地方公共団体には伝わっているのかもしれません)、住民の日々の行動の参考になるような短期的なシミュレーションも発表されるようすがありません。

昨日の記事に、今回の地震に関する研究機関の報告をいくつか紹介しました。また現在、津波の調査がいくつもの研究団体や業界団体とその連携で行われています。これから、それらの報告が数多く出てくるでしょう。しかし、これらの研究・調査・報告は、今後の対策を考える上で欠かせないことですが、基本的に過去の検証です。現在進行している原発被害に対する今日明日の身の処し方、将来の仕事や生活設計に直結するものではありません。

放射能の拡散を出来るだけ正確に予想しようとすると、精細な気象データと原発から放出される放射能や周辺に配置されているモニターの測定値を大型のコンピューターで処理することになると思われます。これらのデータは限られた行政機関と東電に独占されていますので、コンピューターがあってもデータにコンタクト出来ない研究者には不可能な作業です。政府が多数の研究団体に最新データをたえず提供し、多様なアプローチと予見を引き出す姿勢がなければ、相互に検討し、確度を高めることはできません。過去の事象の研究とは違い、予想・予見には地震予知と同様の現実的なリスクがともないます。住民がパニックを起こしたり、一部の産業にダメージを与える可能性があります。それだけに多様な知見の相互検証を行って、精度を高めてほしいと思います。

マスコミでは多数の「専門家」「研究者」が原発や放射能の解説を行っています。一方では、インターネットや集会で、マスコミ学者に対抗する研究者や技術者の発信も多くみられます。以前に読んだ「日米同盟の正体」という本の著者、外務省出身の孫崎 享(うける)さんのtwitter で、日本気象学会理事長の会員むけのメッセージを告発しています。メッセージは短い文章ですのでご覧ください。これに対する気象学会員の反発がなく、自主規制が通っていくのであれば、これは「研究者の集団自殺」です。

追記
私がこのメッセージを読んだのが昨日4月2日です。この記事を書いてから、ほかのWEB SITE がどんな反応をしているか見ようと、いくつかアクセスしてみました。3月31日に数件ある他は、いずれも昨日の記事です。メッセージは3月18日に出されていますから、2週間のあいだ気象学会の会員からの内部告発はなかったのでしょうか。

by MAYSTORM-J | 2011-04-03 05:57 | 社会


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