2011年 04月 01日
11日の地震の後、津波の悲惨な被害や、今も続く福島第一原発の事故と放射能汚染の報道に目を奪われ、地震そのものに対する検証はほとんど報道されていません。マグニチュード9.0 (M9.0) というひじょうに大きなエネルギーの地震でしたが、東北地方では大きな揺れによる被害があまり報道されていません。震度7 の範囲は意外に小さく、むしろ東京・千葉・神奈川の方が、揺れによる混乱が目立ちました。東北地方では、地震の後の津波による被害があまりにも大きく、揺れによる被害報告が出る前に、なにもかもが津波に押し流されてしまったのかもしれません。 しかし、3月9日にM7.2or7.3、10日にM6.6(6.8と報道された記憶)の大きな地震が宮城沖であったのをおぼえています。11日の2日前からあった地震と11日の巨大地震の関係は、その後ずっと気にかかっていました。気象庁の記録を見ますと、9日11:45 三陸沖M7.2 が一連の地震の最初で、11日14:46 のM7.9 までの間に、記録に残されているだけで35回ほど起きています。 なお、11日14:46に起きた地震がM9.0 と一般に伝えられているのですが、マグニチュードというのは、地震を起こす断層面のずれが、長距離におよび、時間が長く続いても、一つの本震で放出されるエネルギーの総和だそうです。14:46 から15:27 まで、断続的に大きな揺れが続き、その後も大きな余震が長期に続いていますが、どこまでが一つの地震としてくくられて、M9.0 となったのかは、素人の私にはわかりません。 知人から教えられた、ハーバード大学石井水晶(みあき)さんの報告を見ると、震源をかえながら次々と連続して地震が発生していくようすがわかります。「破壊面はとぎれていますが、総合すると長さ約480km、幅約170kmのプレート境界で超本震が起こった事がはっきりします。」と締めくくられています。地図上に描かれた黄色のかたまりは大きく3カ所に分かれているようにも見えます。黄色の線でかこまれた範囲が、9日の三陸沖地震の破壊領域です。 東京大学地震研究所のサイトを見ると、その中に「2011.3.9 13:00 第219回地震調査委員会定例会」の簡単な報告があります。どのような内容だったかはわかりませんが、会議の開始1時間余前に起きた三陸沖地震(M7.2 とされている)について、解析が行われたことはわかります。ここからはまったくの想像ですので、読み飛ばしていただいてもいいし、あるいは関係者に詳しく聞ける人がいれば、その内容を聞きたいところです。「調査委員会定例会」とありますので、三陸沖地震をうけてそのために開かれた会合ではないのでしょう。たまたま、直前にM7 をこえる大きな地震があったので、急遽解析をしたのかもしれません。その後地震は群発し、10日未明から早朝にかけてM6 をこえる地震が3~4回起きます。10日に予知連絡会があったのではないかという推測や予知連の中にはその後の大きな地震発生の可能性を予見したメンバーがいた可能性もありますが、公開された報告や資料が見つかりませんので、いまのところわかりません。 しかし、陸よりの宮城沖は30数年周期でM7.5ぐらいの大きな地震が繰り返し、最後が1978年ですので、警戒されていたことはたしかでしょう。この他に東の海溝よりにも別の震源域があって、そこが連動した1793年の地震はM8.2程度だったと言われています。今回は宮城沖だけだはなく、岩手沖、福島沖、茨城沖まで、広い範囲で動いて、さらに大規模な地震になりました。 私の怪しげな知識と理解力では、これ以上書くのは危険ですので、次回にまわします。 地震にかぎらず、社会的に大きな影響を与える「災害予知の公表」というのは、予知する側に精神的プレッシャーをかける事が考えられます。たびたび繰り返された津波警報や注意報に、その後それほどの被害にいたらなかったため住民が慣れてしまい、避難する人が少なかったという調査が報道されてきました。このことは、予報を出すかどうかを決める、災害が起きる可能性の敷居を高くしてしまうことになります。避難体制やパニックの制御、原発に見られたような災害に対する防御態勢の不備など、予報を出した場合の充分な対応のシステムが出来ているとは言えません。これは、地震研究者だけではどうにもならないことでしょう。現在の予知能力の限界も認識していると思いますが、にもかかわらず行政側からは正確な予知を要求されるという圧力もあるでしょう。コスト面から想定される自然災害規模を小さく見積もり、充分な防御を怠るような行政や企業の体質があるかぎり、大胆な予知公表は尻込みしてしまうことになっていきます。
by maystorm-j
| 2011-04-01 22:24
| 社会
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