2011年 03月 28日
国策として進められた原子力  3月29日 2011年
この数日は、タービン建屋3棟で、強い放射能汚染された水が、地下に溜まっている事がわかり、さらに屋外でも同様の水が溜まっていることが判明し、事故の沈静化はまた一歩遠のきました。原子炉本体・格納容器や配管に損傷がある可能性が指摘され、燃料の破損を東電が認めるようになりました。かなり早い段階で、東電と保安院は認識していたのではないかとも言われていますが、真相はわかりません。

過去に原発で起きた多くの損傷やミスを隠してきた東電ですから、常に疑いの目で見られるのは仕方ないことですが、この2週間あまり、海外のメディアなどは東電が観測データを隠していると考えているようです。前に紹介しました「佐藤栄佐久 前福島県知事のインタビュー動画の真ん中あたりで「東電と国は同じ穴の狢(ムジナ)」だと思っていたけれど「狢は国だった」と佐藤さんが発言しています。新潟の柏崎刈羽原発が活断層の上にあると指摘された東電が保安院に報告したところ、2年間たなざらしにして国は発表しなかったということです。

私たちは事故・事件がおきると、どうしても目の前の犯人だけに目を奪われます。もちろん、目の前の犯人が直接的には事件を起こしたのですから、それを糾弾するのは当然です。さまざまな手抜き・ミス・想定違い・・・・など、事故につながる可能性は多方面から指摘されていました。それでも、一つだけ私たちが見落としてはいけない事実があると思います。それは東電のトップから現場の作業員・下請け会社にいたるまで、「事故が起きてほしいと願った」わけではないという事です。

誰もが「起きてほしい」とか「起こそう」とは思わなかった事が起きるのには、背景があります。どんな仕事をしていても「手抜き・ミス・思い違い」はあります。そこから事故を起こせば、損害は被害者のみならず、自分にもかかってきます。電力会社という利潤を追求する私企業が、好んで事故を起こし損害を出すわけではありません。電気事業を独占する電力会社のおごり体質は確かに強く感じます。独占が許されていて、国民の生活に欠かせない事業だからこそ、電力会社を規制・監督し、安全をチェックする行政のシステムが二重三重に張られていたのではないでしょうか。しかし、経産省(旧通産省)は監督官庁としての役割を果たすどころか、むしろ積極的に危険性を隠してきたと思われます。

沖縄を除く全国の電力会社は原発を作っています。どこもが本当に原発を必要としたのでしょうか? 原発はたびたび事故で停止します。そのたびにあちらこちらで停電が起きたでしょうか。 原発は出力を調整するのが困難と言われています。運転を開始したら、長期間動かし続けます。水力や火力のように、電気が余る時間帯に発電を減らす事ができません。そのために、発電量全体に占める原発の割合が大きくなりますが、いくつかの原発炉が止まっても他の発電でまかなえて、停電がおこらないという事でしょう。今回の震災は地域が広く、原発2カ所のほか、東電の火力発電所が4カ所停止したため、合計で2000万キロワットぐらい足りなくなるようです。火力発電所2カ所は比較的早く修復出来そうで、不足分は夏場で1000万キロワット余りの予測。残りの火力発電所の修復時期にもよるでしょうが、節電で乗り切れるかどうかの際どいところではないでしょうか。東電の水力や火力発電の稼働率はわかりませんが、原発を稼働させるために、かなりの部分が休止しているのは間違いありません。今回も休止中の火力を稼働させようとしています。

電力会社が諸手をあげて原発一直線かというと、必ずしもそうではないと思います。原子力はコストが安いと言われますが、原発から出る使用済み燃料を税金で後始末でするため、発電コストが安いというからくりがあります。古くなった原子炉の後始末もコストには含まれていません。費用がかかるから福島第一原発の老朽炉を、使用期限をこえて使い続けようとしたところでした。本来、企業が負担するべきコストを、国がもってくれるから儲かるわけです。

ウランが核分裂して出す熱量は、同じ重さの石油に較べると莫大な大きさです。そのため、原子力発電は火力発電に較べると効率がいいと思いがちです。しかし、核分裂で発生した熱の3分の1しか、電気に変換できません。残りの3分の2は海に放出され、海水温を上げてしまいます。今回の事故でわかったように、使い終わった燃料も熱を出し続けます。火力発電は近年、原子力よりも効率が良いようです。東京湾周辺の天然ガスを使ったガスタービン発電はさらに効率よく、最高59% と言われています。小型で、建設費が安く、電力が不足しそうな時間帯に素早く対応出来ます。都市部に建設が可能なので、廃熱を利用する事もできます。ロシアが日本に天然ガスの緊急輸出を申し出ていました。

六本木ヒルズが電力不足の東電に、一般家庭1000戸分程度の電気を供給するという報道がありましたが、コージェネレーション(コージェネ)と呼ばれる地域の電熱併給型の発電も進化しています。東京都中央区明石町で、聖路加病院に設置し周辺地域で利用されているシステムは効率の良いものです。燃料に都市ガスを使って小型化し、一般家庭にも普及し始めていましたが、「オール電化」を強引に勧める電力会社に押されて、伸び悩んでいるようです。

火力発電で全てがうまく行くわけではありません。化石燃料を燃やすという欠点は避けれません。震災被災地の復興デザインの中に、小水力、風力、太陽光、木質チップの電熱併給システム・・・等々、その立地、需要に見合った安全でクリーンな発電システムが導入される事が望ましいと思います。しかし、一方で復興のために経済活動を支える安定的で大量の電力供給が、現在は要求されます。エコロジカルな発電だけで、現状を乗り切る事はできません。火力・水力の効率化を進めながら、様々な発電方法を取り入れて、徐々に切り替えていく事でしょう。

話をもどしますが、原子力を押し進めてきたのは、電力会社だけではないという事に気づきます。原子力発電は国の事業であり、電力会社は前線で国策を担わされてきたと考えるべきでしょう。国が経費を大幅に負担してくれるから原発を作って稼働させてきたが、一方ではいつ止まるかわからないリスクや燃料を海外に依存する不安もあって、火力発電の改良も怠らなかったというのが電力会社の企業としての姿勢と思います。電力会社を擁護・賞賛するつもりはさらさらありません。原発推進ではさんざんウソや隠蔽を繰り返してきましたが、利潤追求を目的とする私企業であれば、危険の大きい原発だけではなく、火力にも投資を分散しておくのは当然でしょう。

新しい技術は、通常官民の研究機関や個人が開発し、企業化され、競争を経て淘汰されて進化し、広まっていきます。生物の変異と自然淘汰、進化の過程と相似します。その過程を通る事で、危険なものや不適当なものをある程度ふるい落とす事が出来ます。しかし、原子力発電という新しい技術は、当初から国策として、アメリカから導入されたもので、不適当なものを淘汰する圧力のない環境で進められてきました。当初の導入時は、アメリカの水爆実験で被爆した第五福竜丸事件で高まる国民の反原子力意識が、アメリカの核戦略の障害になることを避けるため、「原子力の平和利用」という隠れ蓑をきせて意識操作を進めたという経過があります。

「原発導入のシナリオ 〜冷戦下の対日原子力戦略〜」 NHK、1994年 というテレビ映像を紹介します。第五福竜丸事件については、小学生だったころのことですがいくらか記憶に残っていて、テレビはなく、玉電という路面電車に乗って渋谷でニュース映画を見たのではないかと思います。「だましのテクニック」はそれほど巧妙なものではありません。と言いますか、如何に巧妙でも、事故が起きれば破綻が見えてきます。原発はこれまで絶えず大小の事故を連発してきました。だまされる側にも責任があると思いますが、破綻の結果を引き受けなければならないのは、全面的にだまされた私たちです。
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by maystorm-j | 2011-03-28 13:15 | 社会 | Comments(0)


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