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2012年 02月 21日
再度、瓦礫の焼却と焼却灰の管理について  2012年2月21日
震災瓦礫を全国各地で焼却し、その灰を各地に埋め立てるという国からの要請を受けて、自治体の動きが活発になっています。その問題点は、自治体が開いている住民説明会で、住民側からいろいろ提出されていて、私が住む長野県佐久地方では、焼却灰の受け入れを民間業者が行っている問題についての説明会があり、参加しました。他にも各地の説明会映像をいくつか見ました。

最初に説明会そのものの問題点を考えます。ほとんどの場合、住民からは受け入れの反対意見が多いのですが、被災地支援のためには受け入れもやむを得ないという意見も少数出されます。両者の意見に対し、自治体側の解答が、どの映像でも、言葉遣いにいたるまできわめて類似していることに気付きます。自治体担当者の多くは、前例のないこのような問題について、自ら勉強し役所の中で充分な検討を経ているというより、国から受けたレクチャーをそのまま機械的に反復しているような印象があリます。

当然ですが反対側はひじょうに勉強して来ていますし、賛成する人は心情を訴えるのに対し、自治体担当者は住民を納得させる論理もありませんし、共感させる理念も感じられません。女川で録画された現地の事情を訴える映像だけに頼っていて、放射能汚染に対する自らの危機感も責任感も見られません。汚染物の処理が自治体にとって、国の支援要請と補助金という構図の中でしか捉えられていません。関東圏では受け入れる瓦礫以上に、地元の土壌、樹木・落葉、農産物が汚染されているところもあり、安全にその処理が出来るかという問題があるにもかかわらず、受け入れる瓦礫は汚染度が低い、焼却灰の汚染度は国の基準以下に抑える、ということしか言いません。

住民説明会というスタンス自体に無理があり、意見交換会、ともに考えるという意識が自治体と住民双方に必要と思われます。多くの説明会では、前段に講演や自治体側の説明が長々とあり、「質問と解答」という構図に押し込められた意見交換は、どこでも時間切れで不十分なまま終了します。問題の性質上、何年もだらだら協議するわけにもいきませんが、2ヶ月ぐらい週1〜2回の集中した話し合いを設けて住民の合意に向う事が望ましいと考えます。

自治体の説明で安全の根拠とされているのは、東北で行われた焼却実験ですが、現在は細野環境大臣の地元島田市をはじめいくつかのの自治体で試験焼却が始まっています。各自治体の持つ焼却施設は種類も構造も様々ですし、焼却温度によっても結果は違う可能性がありますので、試験が必要な事は確かです。しかし、私にはここで解らないことに、現在受け入れを検討している関東圏の自治体の多くは、これまで地元で確認された汚染樹木・落葉、農産物などをどのように処理して来たのか、という問題があります。出荷停止にした汚染堆肥はどこに行ったのでしょうか。

佐久市の民間処分場には関東圏の多数の自治体から、汚染された焼却灰が持ち込まれています。それを見る限り、各地で既に汚染されものが「ゴミ」として焼却されている事は明らかです。国の基準値以下だから焼却し、基準値以下だから灰を移動させているわけです。あるいは、基準値以下に収まるように汚染されていないゴミ、灰と混合しているのかもしれません。各自治体と住民は、瓦礫受けれ以前に、汚染物をどう処理するべきかという問題を、地元にある汚染物を含めて根本的に考える必要がありそうです。

私は、汚染された農水産物は東電に引き取らせて補償させるのが筋だと思いますが、それにしても落葉や堆肥、下水汚泥などまで引き取らせるのは現実的ではないように感じます。一般ゴミとして自治体に持ち込まれるものを、汚染度によって分別する事は困難です。瓦礫処理以前に、地元にある汚染ゴミの焼却試験で、バグフィルターの性能、焼却温度、飛灰・残灰の濃度などを検証することではないでしょうか。

残った焼却灰は当然、元のゴミに較べると体積は10〜数10分の1に、放射能濃度は10〜数10倍に濃縮されるわけですが、その灰は東電と政府が集中管理すべきと考えます。ある基準値以下なら、どこに埋め立てても安全という事はありえません。土をかぶせればたとえセシウムが漏出しても土が吸着するから安全、と自治体は言いますが、誰もテストした事がないご都合主義的想像にすぎません。かぶせた土が、津波や洪水でもっていかれて、その下の汚染灰が広範に散らばることも考えられます。セシウムより半減期がはるかに長い他の放射性物質はほとんど測定が行われていませんので、埋め立ての安全性は、構造的にも管理システムの点からも、長期的に保証されていません。

基準値以下におさめるために混合する事は、長期に管理すべき汚染灰の量を増やすだけです。せっかく焼却により体積を減らすのですから、それを固形化など安定した状態にして集中管理すべきでしょう。汚染者の責任として、東電が引き取り管理すべきで、東電が今後国有化の方向にいくなら国が管理すべきものです。国は最近、焼却作業の受け入れ先と、焼却灰の受け入れ先を分離する可能性を言い出していますが、東電を国有化した場合を考えて、焼却灰を抱えた状態の東電を引き受けたくないのが本心ではないかと疑います。

さらに、瓦礫の出どころとしては岩手県と宮城県に限られていて、一番汚染されている福島県が含まれません。いまのところ、福島県は国が直接処理すると言っているようですが、昨年末から今年にかけて、各地で放射性物質の飛散・降下量が増えた事が見られたように、福島県内の瓦礫や山林の汚染を放置する事は出来ません。一番重要なところが抜けたまま、莫大な処理費用というばらまきを先行しているように見えます。福島は地元で処理場を建設して処理するという事であるなら、そこで生じる高濃度の焼却灰の管理方針を明らかにする必要があります。福島でいたるところに埋め立てるというのでしょうか。あるいは全国各地で引き受けろというのでしょうか?

国のやりようには、どこかもう福島の安全を放棄している印象があります。しかし、全国各地の安全は福島の安全と切り離せない問題である事を、放射能汚染物の処理問題からも私たち住民は見て取る事が重要です。自治体側は国の要請を反復・説明するだけでなく、住民と時間をかけて話し合う事を求めます。

by maystorm-j | 2012-02-21 08:58 | 社会


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