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2011年 05月 07日
ICRP 勧告について / Pub.109 , Pub.111/ 現存被ばく状況   5月7日 2011年
前の記事にICRP 2007年勧告について書きました。それですら難解な上、その後二つの勧告が出ています。放射線医療にかかわる人以外にはあまり注目されなかったようで、正式な和訳と前に紹介したような検討作業が行われたようすはありません。対策本部も文科省もその内容を把握しないまま、あるいは都合のよいところだけを見つけて、「ICRP 勧告にしたがって・・・」と、20ミリシーベルトを基準に設定したようです。

2007年勧告がPub.103(パブリケーション103号)ですが、その後の二つはPub.109 [ http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15290,76,1,html ] Pub.111 [ http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15092,76,1,html ] です。

ICRP という組織が絶対的なものではない、という点については前に書いた通りですし、多くの批判があってのことでしょうが、その勧告内容が年々原発推進側にきびしくなっていることも事実のようです。二つの新しい勧告で、今回の原発事故にかかわる重要な変更点は、放射能汚染・被曝について、「緊急時被ばく状況」から「現存被ばく状況」という範疇の設定の具体化のようです。緊急被ばく状況というのは原発事故が今も進行中の原発施設内や周辺地域の問題と考えていいのでしょう。それに対して、とりあえず上空からどんどん放射能が降ってくる状況は落ち着いていて、汚染された環境の中でどう対策を進めるか、どう暮らしていくかという問題が、現存被ばく状況ということと思います。それにしても、上にリンクさせたサイトの中にあるpdfファイルの文章はわかりにくい表現ですね。自然科学専攻学生には大学卒業まで「国語必修」にしたいものです。

さて福島県内の避難しないで良いとされている地域(現存被ばく状況)に関する記述を引用しますと、Pub.111で「汚染地域内に居住する人々の防護の最適化のための参考レベルは、この被ばく状況区分に対処するためにPublication103(ICRP.2007)で勧告された1〜20mSvの範囲の下方部分から選定すべきである。過去の経験により、長期の事故状況における最適化プロセスを制約するために用いられる代表的な値は1mSv/年であることが示されている。国の当局は、現地の一般的状況を考慮に入れ、また状況を漸進的に改善するために中間的な参考レベルを採用するよう全体の復興プログラムのタイミングをうまく使ってもよい。」とあります。(この文章、なんとかならんもんですかねえ? ちょっとだけ、文科省の担当者に同情します)

ようするに、1〜20mSv の中で下の部分(1~10?)、長期的には1mSv にしろと言っているような気がします? 前の勧告で、子どもと妊婦には特別な配慮が必要なことを認めていますので、子ども以外でも下の部分なのですから、子どもが上限の20mSv でよいというはずはありません。この勧告内容が日本国内で法的な力をもたないからこそ、政府は「勧告に従って・・・」という表現をしているので、法律的には一年1mSv が基準でしょう。

以前から「原子力村」という言葉が聞かれます。政府や電力会社側で、原発を推進してきた研究者達をさすものでしょう。その中でも無批判に追随を繰り返している部分と、IAEA やICRP などの国際的な組織で原発推進を基本におきながら科学的検討を行った方針に忠実な部分があるようです。後者の場合は、そのスタンディング・ポイントに問題があり、データの偏りもあるのでしょうが、科学者としてそこから得られた科学的結論には誠実なのでしょう。小佐古元参与はたぶんその意味で、厳密に自分の科学的知見に従おうとしたと思われます。

小佐古氏はやめる直前に、官邸に分厚い提言書を提出しています。内容は現在公表されていませんが、かなり具体的に、状況への対処法や具体的な汚染軽減法などが提案されているようです。IWJ 岩上安身さんが、小佐古氏の教え子で、小佐古氏を官邸に推薦した一人である空本誠喜議員にインタビュー [ http://iwakamiyasumi.com/archives/9032 ] しています。

by maystorm-j | 2011-05-07 08:12 | 社会


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